DXをやりたいけど何から始めれば良いのか分からない?まずはできるところから。

こんにちは、シナスタジアデザインです。

みなさんはDXという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「DX」はデジタルトランスフォーメーションを表す単語で、ビジネスの世界では当たり前の言葉になっています。特に大手企業ではDX推進のための部署が作られて日々研究されています。
ところで、DXを推進するというのはそもそも何なのでしょうか?

そもそもDXは何をすれば良い?

「DXとは?」といった概念は検索すれば大量にヒットしますが、具体的に何をすればよいかはほとんど書かれていません。そもそもDXは企業ごとにするべきことが異なるため、概念の定義はできてもテンプレートは作りにくいものです。なので個別の課題を見ないと具体的な提案ができないのが現状です。

経済産業省「産業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html

経済産業省DXガイドライン
ITの力を有効活用して業務効率を上げたり、既存のデータを最大限活用できる基盤を作ったりと、言葉ではなんとなく理解しているものの具体的な企画に落とし込むのは難しいのではないでしょうか。
当社は多くの取引先様とのお仕事の中でDXにも取り組んでおり、その中でも成功例を持つ企業様とお仕事をさせていただいています。その経験からうまくいくもの、失敗するものの例をご紹介します。

成功するDX


DXの成功とはそもそも何かという定義をしなければなりませんが、今回は参考例なので大きな枠組みとして捉えています。
例えば製造業様の場合のDXは何ができそうか。まずは現在の課題、保有資産(データ)業務効率を上げたい作業などを一覧にするところから始まります。そこから改善していくのですが、単なるマニュアル更新ではなくITの力を使って何倍にも効率化していきます。

■金属加工や製材等の場合
作業工程の中でコンピューターを使っている場面があると思います。設計加工するためのデータを入力したり、ライン制御を行ったり。すでにITを使っているじゃないかと思うところですが、さらに効率的なITをプラスしていきます。

・専門職の方が手で設計している部分をコンピューターが自動で行い人間の手を使わない
これはAIによる自動化や機械学習による最適化が利用できる場合が多いです。特に専門職の場合は高齢化や跡継ぎ問題が発生しており、技術の継承ができず衰退している業種もあります。また、技術習得に数十年かかるような高度な知識の場合、今から後進を育成しても間に合わず品質の低下が懸念されます。
そこで、職人の暗黙知を数値化してコンピューターが仕事をする事例が増えてきました。もちろん職人の感覚値は複雑なのであっという間に完璧なものができるわけではありません。現状は初期設計を自動化して3割ほどの工数を削減する事が現実的になります。
職人の暗黙知をデータ化できれば、あとはAIが計算して最適化し、職人と同じくらいのレベルにまで引き上げることも可能でしょう。しかしその暗黙知を高いレベルでプログラミングできる人材というのは日本ではあまりいないのが現状です。

事例:自動で設計するソフト「PlantStream」
https://plantstream3d.com/jp/
初期設計を自動化して職人が修正。初期設計だけでも数億円規模のコスト削減が見込めます。

・ビックデータの活用
大量の顧客データや実験データなど、過去の資産を持っている場合にもDXは実施しやすい環境にあります。DXの場合は最初に用意するデータがかなり重要で、全くのゼロから始めると膨大な時間がかかり失敗する確率も高まります。データも資産なので、うまく活用することで新しいニーズに合致させることも夢ではありません。
例えば木材加工をして配送する場合、効率的な資材の積み方や配送ルート、今後見込まれる需要の予測などをより高精度に高められる可能性があります。これまでは自社の過去の情報を頼りにしているところに、世界中の気候変動データ、海洋気象情報、トラックの整備情報や金融データまであらゆる情報を統合することにより、最終的な販売情報の精度を高めていきます。計算ロジックを見つけ出すまでが大変ですが、開発に成功すれば多くの未来予測が可能になります。

失敗するDX


DXを何となく初めてみたけど全く成果が出ずに失敗した、なんてことが増えてくるかもしれません。それは一番最初の目的や課題の洗い出し、さらに開発内容が問題になります。

先に出てきたAIを例にします。AIと聞くとコンピュータが最適な情報を自動的に出してくれる、なんだかよくわからないけど凄いもの。だと思っていませんか?半分正解で半分間違いです。
AIは与える学習データと計算されたデータを何度も検証して求める結果に近づけていく育成作業が必要です。それは7日間で結果が出るかもしれないし、1年たっても結果が出ないかもしれません。それくらい技術者の力量と持っているデータに左右されます。

・自動シフトDX(例)
出勤する順番を効率的に決めるシステムを作ろう、という場合、仕組みとしては可能ですがそこに実際に働く人が介在します。有給を取得したいとか病気で休むとか、様々な条件が発生すると途端に作り直しが発生します。じゃあいつ、誰が病気になるかを予測しようとか、有給を使うタイミングを予測しようとか、訳のわからない技術を作ろうとしてしまうと、DXで求めるべき本質を見誤って意味のない製品が出来上がり失敗してしまいます。どこまで効率化し、どのくらい工数削減を目指すか。まずは手の届く小さなところから始めてみましょう。

事例:自動シフト作成ツール「Shiftmation」
https://www.shiftmation.com/
最終的には人がチェックして完成。ゼロから考えずある程度のテンプレートを作ってくれれば十分な効率化が見込めます。

以前、ごみ処理のDX案件でこんな事がありました。
ゴミの分別にAIが使えないかということで進めていくと、現場の環境やデータ取得のための撮影カメラの精度、分別速度など、人間の手で分別するよりもお金がかかり費用回収が見込めない結果になりました。DXのシステムができれば終わりではなく、そのシステムは本当に効率がよく素晴らしいシステムなのかを企画段階である程度見極める必要があります。

AIなのか機械学習なのか


DXの失敗事例でよく聞くのが「AI」を使うのか「機械学習」を使うのか、それとも既存の製品を組み合わせるのか。解決するための方法が定まらない場合です。
野菜や果物の傷や形を判別するシステムはAIよりも機械学習が合っています。これは規定のルールに合っていればOK、沿っていなければNGの判断を下すシステムを想定しますが、決められたことをこなすのは機械学習の仕事です。
ではAIの仕事はというと、新しい品種を生み出す際に色や形、味などの結果をシミュレーションしたり、どの地域でどの野菜が売れるのかを検証したり、決まっていない事柄を考えるのに適しています。もちろんどちらも利用すれば良いのですが、開発費用や計算結果を求めた際に最適な仕組みは何かを改めて考えなくてはなりません。

DXという言葉に踊らされないようにする

まさに今、DXをすれば業務効率が上がり業績も上がるんだ、という考えを持っている方は一歩踏みとどまってください。本当にそれは必要なものなのでしょうか。企画部分に明確な目標があり、それを実現すれば確実に良くなる場合、開発する技術は最適なものでしょうか。何でもかんでもAIを使えば解決するものではありませんし、開発会社に任せっきりで何もわかっていない状態は非常に危険です。
また、全くのゼロからDXをやってみたいと動き始めた場合は情報収取を最優先事項にします。世の中の課題を見つけて解決できれば異業種向けの製品であってもDXの成功事例になります。

まずはDXで何ができるのか、どんな技術があって世の中にはDXの成功事例があるのか。情報を集めて知識を得ることが重要です。でなければお金だけ支払って出来上がったシステムが全く機能せず使いにくい失敗作になるかもしれません。
当社が参加しているプロジェクトでもDXの仕事をする際、まずは世の中の情報を集め、必要に応じて業界の専門家にヒアリングし、DXで求められる結果を実現するための技術検証を行います。多くの場合は数百万円レベルの投資でPoC(Proof of Conceptの略で、「概念実証」)を行い実現の可能性が見えたところで人材を投資して本格的な開発を進めていきます。
まずはできることから初めて小さな成功事例を積み重ね、DXとは何かを肌で感じながら進めていくのがDX成功の秘訣です。